65歳からの資産運用:失敗しないための選び方と注意点
65歳を過ぎると、これまでの働き方から生活スタイルが大きく変わり、お金との向き合い方も変化します。年金収入が主な柱となる中で、「今ある資産をどう守り、どう増やしていけば良いのか」という不安や疑問を感じる方も少なくないでしょう。特に、退職金やこれまでの貯蓄をどのように管理し、老後を安心して暮らすための資金にすれば良いのか、その答えを探している方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、65歳以上の方が安心して資産運用に取り組めるよう、失敗しないための選び方や注意点について、分かりやすくご説明いたします。リスクを抑えつつ、ご自身のペースで資産を守り育てるためのヒントを見つけていただければ幸いです。
65歳からの資産運用で大切なこと
資産運用と聞くと、難しい、リスクが高いと感じるかもしれません。しかし、いくつかの大切なポイントを押さえることで、ご自身の状況に合った堅実な運用を目指すことができます。
- ご自身のリスク許容度を確認する 「リスク」とは、運用したお金が減ってしまう可能性を指します。65歳からの資産運用では、元本割れ(投資したお金が減ってしまうこと)は避けたいと考える方がほとんどでしょう。ご自身がどの程度のお金の変動なら受け入れられるのか、無理のない範囲を明確にすることが重要です。
- 長期的な視点と短期的な資金の確保 老後資金の運用は、数年で結果を出すものではなく、数十年単位の長期的な視点を持つことが基本です。しかし、急な病気や介護、住宅修繕など、いざという時の出費に備える「短期的に必要な資金」(生活費の半年~1年分程度)は、預貯金として手元に置いておくことを推奨します。運用に回すのは、当面使う予定のない余裕資金に限定しましょう。
- 運用する目的を明確にする 何のために資産運用をするのか、その目的をはっきりとさせることも大切です。例えば、医療費への備え、趣味の資金、孫への教育資金、あるいは相続に備えるためなど、目的によって選ぶべき運用方法も変わってきます。
安心して選べる低リスクな運用方法
リスクを抑えながら、着実に資産を守り育てるための代表的な方法をご紹介します。
- 定期預金 最も身近で分かりやすいのが定期預金です。預けたお金は元本が保証されており、一定期間は引き出せない代わりに普通預金よりも高い金利がつくことが一般的です。金利は非常に低いですが、預けたお金が減る心配がほとんどないため、資産の目減りを避けたい方にとっては安心できる選択肢と言えるでしょう。
- 個人向け国債 国が発行する債券で、日本国内に住む個人が購入できます。半年ごとに利子が支払われ、満期になると元本が戻ってきます。国が発行しているため、銀行の預金と同様に安全性が高い金融商品として知られています。変動金利型や固定金利型があり、年利0.05%の最低金利が保証されているため、低金利時でも安心です。
- 低リスクの投資信託
「投資信託」とは、多くの方から集めたお金をプロが運用し、その成果を投資家に分配する金融商品です。ご自身で個別の株を選ぶ必要がなく、少額からでも始められるのが特徴です。特に65歳からの運用では、以下の点に注目して選びましょう。
- 債券型投資信託: 株式に比べて価格の変動が小さく、比較的リスクを抑えた運用を目指します。
- バランス型投資信託: 株式、債券、不動産など、複数の資産に分散して投資を行います。一つの資産に集中するリスクを減らすことで、安定した運用を目指しやすい傾向があります。
- 専門用語の解説:
- 元本割れ(がんぽんわれ): 投資した金額よりも、戻ってくる金額が少なくなることです。
- 分散投資(ぶんさんとうし): 一つの金融商品に全てのお金を投入するのではなく、複数の商品や資産に分けて投資することです。これにより、どれか一つの値動きが悪くなっても、全体の損失を抑える効果が期待できます。
運用を始める際の具体的な注意点
安全に資産運用を進めるためには、いくつかの注意点も心に留めておくことが大切です。
- 詐欺への警戒を怠らない 残念ながら、高齢者を狙った詐欺は後を絶ちません。「元本保証で必ず高利回り」「未公開株で大儲け」「著名人が推奨する商品」といった話には、特に注意が必要です。甘い言葉で近づいてくる話は、詐欺の可能性が高いと疑ってください。不審な連絡があった場合は、一人で判断せず、すぐに家族や消費生活センター、警察などに相談することが重要です。
- 必要資金は必ず手元に確保する 生活費や医療費、介護費用など、将来確実に必要となるお金は、運用に回すべきではありません。これらはすぐに引き出せる預貯金として確保し、あくまで「当面使う予定のない余裕資金」を運用に充てるようにしましょう。無理な運用は、心の余裕を失わせ、かえって生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 家族と運用状況を共有する ご自身の資産状況や運用している金融商品について、信頼できるご家族に話しておくことをお勧めします。万が一、ご自身が判断できなくなった際や、相続が発生した際などに、家族がスムーズに対応できるようになります。通帳や証券口座の情報をまとめておくことも大切です。
公的な相談窓口と専門家の活用
「何をどこから始めれば良いか分からない」「もっと詳しく相談したい」と感じた際には、一人で抱え込まず、専門家や公的な相談窓口を積極的に活用しましょう。
- 金融機関の窓口 銀行や証券会社の窓口では、取り扱っている金融商品について説明を受け、購入手続きを進めることができます。ただし、これらの窓口は自社の商品を販売する立場であることを理解しておく必要があります。
- 公的な相談機関
- 消費生活センター: 不審な投資話や金融商品のトラブルに巻き込まれた際に、相談することができます。全国どこからでも「188(いやや)」の番号でつながります。
- 金融庁の相談窓口: 金融商品に関する一般的な疑問やトラブルについて情報提供を行っています。
- ファイナンシャルプランナー(FP) ファイナンシャルプランナーは、個人の資産状況やライフプランに合わせて、資金計画や運用方法について客観的なアドバイスをしてくれる専門家です。資格を持つFPは、中立的な立場から、最適なプランを一緒に考えてくれるでしょう。相談する際は、料金体系やこれまでの実績、どのような資格を持っているかを確認することをお勧めします。
終わりに
65歳からの資産運用は、これからの人生を豊かにするための大切な一歩です。焦らず、ご自身のペースで、しっかりと情報収集を行い、納得のいく選択をすることが何よりも重要です。もし不安なことや分からないことがあれば、一人で抱え込まず、信頼できる家族や公的な相談窓口、専門家を積極的に活用してください。この先の人生も、安心して健やかに過ごせるよう、この記事がその一助となれば幸いです。