高齢者を狙う詐欺の手口と被害に遭わないための対策
高齢者の皆様にとって、安心できる老後を送るためには、日々の生活の中での様々なリスクに備えることが大切です。中でも、大切な資産を失ってしまう詐欺は、他人事ではない身近な脅威となり得ます。残念ながら、高齢者を狙った詐欺事件は後を絶ちません。
このコラムでは、どのような詐欺の手口があるのか、そして大切な資産を守るために、ご自身やご家族がどのような対策を講じればよいのかについて、具体的な情報を提供いたします。
高齢者を狙う詐欺の主な手口
詐欺の手口は年々巧妙化しており、一見すると信頼できる情報源からの連絡のように見えることもあります。ここでは、代表的な詐欺の手口をご紹介します。
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特殊詐欺(オレオレ詐欺、還付金詐欺など) 特殊詐欺とは、被害者をだまし、口座振り込みや現金の手渡しなどで金銭をだまし取る犯罪の総称です。
- オレオレ詐欺: 親族や警察官、弁護士などを名乗り、「交通事故を起こした」「逮捕される」「借金がある」などと偽って、緊急事態を装い金銭を要求します。冷静な判断がしにくい状況を作り出すことが特徴です。
- 還付金詐欺: 市役所や税務署の職員を名乗り、「医療費や年金の還付金がある」と電話をかけ、ATM(現金自動預け払い機)の操作を指示し、実際にはお金を振り込ませる手口です。公的機関がATMで還付金の手続きを指示することはありません。
- 架空請求詐欺: 利用した覚えのないインターネットサイトの料金や、身に覚えのない有料サービスの利用料などを請求し、不安を煽って金銭をだまし取ろうとします。「〇日までに支払わないと裁判になる」といった強迫的な文言が使われることがあります。
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金融商品詐欺 「必ず儲かる」「元本保証」といった甘い言葉で、実態のない未公開株や社債、海外の投資話などを持ちかけ、高額な投資をさせる手口です。購入した金融商品は無価値であるか、最初から存在しないことがほとんどです。
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訪問販売や点検商法 突然自宅を訪れ、「屋根が壊れている」「耐震補強が必要だ」などと不安を煽り、不要なリフォーム工事を契約させたり、法外な料金を請求したりする手口です。点検と称して高額な契約を迫るケースも報告されています。
被害に遭わないための具体的な対策
詐欺の被害を防ぐためには、日頃からの心構えと、怪しいと感じたときの行動が非常に重要です。
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「お金の話は安易に信じない」という意識を持つ
- 突然の電話や訪問で、お金や個人情報を要求された場合は、まず疑う姿勢が大切です。
- 公的機関が電話やATMで還付金の手続きを案内することはありません。
- 「必ず儲かる」「元本保証」といった投資話は、詐欺である可能性が高いと考えられます。
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すぐに判断せず、必ず誰かに相談する
- 不審な電話やメール、訪問を受けた際は、すぐに返事をせず、家族や親しい友人、信頼できる専門家(弁護士、税理士など)に相談するようにしてください。
- 相手が「誰にも言わないでほしい」と言ってきた場合は、特に注意が必要です。
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公的機関や相談窓口を活用する
- 怪しいと感じた場合や、すでに被害に遭ってしまったかもしれないと感じた場合は、以下の窓口に相談することが推奨されます。
- 警察相談専用電話「#9110」または最寄りの警察署: 詐欺の手口や被害状況について相談できます。
- 消費者ホットライン「188(いやや)」: 消費生活に関する様々なトラブルについて相談できます。身近な消費生活センターにつながります。
- 地域包括支援センター: 高齢者の生活全般に関する相談を受け付けており、詐欺被害に関する不安についても相談が可能です。
- これらの機関では、専門の相談員が親身になって対応してくれますので、一人で抱え込まず、積極的に利用することが大切です。電話だけでなく、直接窓口に出向いて相談することも可能です。
- 怪しいと感じた場合や、すでに被害に遭ってしまったかもしれないと感じた場合は、以下の窓口に相談することが推奨されます。
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電話対策を見直す
- 知らない電話番号からの着信には出ない、または留守番電話設定にしておくことで、直接犯人と話す機会を減らすことができます。
- ナンバーディスプレイ契約を利用し、知らない番号からの電話は安易に出ないという対策も有効です。
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個人情報の管理を徹底する
- 電話やインターネット上で安易に住所、氏名、銀行口座番号、暗証番号などの個人情報を伝えないようにしましょう。
- 身分証明書のコピーや預貯金通帳のコピーを要求されても、安易に渡さないことが重要です。
万が一、被害に遭ってしまった場合の対処法
もし詐欺の被害に遭ってしまった場合は、冷静に対応し、迅速に行動することが大切です。
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すぐに警察に相談する 最寄りの警察署、または警察相談専用電話「#9110」にすぐに連絡し、被害状況を詳しく説明してください。犯人の特定や被害回復の可能性を探る上で、初期の行動が重要となります。
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金融機関に連絡する もし銀行口座からお金が引き出されてしまった、クレジットカードを不正利用されたなどの場合は、すぐに取引のある金融機関に連絡し、口座の停止やカードの利用停止を依頼してください。
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家族や信頼できる人に状況を伝える 一人で悩まず、すぐに家族や信頼できる人に状況を伝え、今後の対応について協力してもらうことが大切です。
まとめ
高齢者を狙う詐欺は、年々手口が巧妙化しており、誰もが被害に遭う可能性があります。詐欺から大切な資産を守るためには、常に「怪しい」という意識を持ち、お金の話には安易に乗らないこと、そして困った時にはためらわずに公的な相談窓口や信頼できる人に相談することが最も重要です。
ご自身だけでなく、ご家族や周囲の方々とも詐欺の危険性について話し合い、互いに注意を呼びかけ合うことも、被害防止につながると考えられます。この情報が、皆様の安心な老後の一助となれば幸いです。